エピソード紹介♡パン教室の先生と・・プロポーズから始まった恋

エピソード紹介♡パン教室の先生と・・プロポーズから始まった恋

エピソード紹介♡パン教室の先生と・・プロポーズから始まった恋

休日、目が覚めたらもう13時を回っていた。

今日は朝から洗濯したり掃除をしたり、平日できないことをいっぱいしたかったのに・・なんて一瞬後悔の念に駆られたけれど、耳を澄ませば雨の音。

暗い空をぼんやりと眺め、気が付くと泣いていた。一体何日こうして過ごせばいいのだろうか。

「くるしい… 」

先日、3年付き合っていた彼にフラれた。好きな人ができたからと、別れ話をされたその日は、一度として私の目を見てくれなかった。

泣いてすがって、別れたくないといえば彼は考え直してくれたのだろうか。今でもあの日を思い出しては涙が止まらなくなる。

荒れて散らかった部屋。溜まった洗濯物と流しに放置された食器たち。

このままでは残り少ない女子力までも消失してしまいそうだと思い、通勤鞄から一冊の情報誌を取り出した。

くすんだ色の再生紙をバラバラとめくり、目当てのページで手を止めた。そしてそこには整った文字で ≪ パン教室生徒募集 ≫の文字。

力なく携帯画面をフリックして、久しぶりに声を振り絞って電話をかけた、これがもう半年も前のお話し。

4ae8d3b7e702bbca1d14462b58a93c15_s[1]

香ばしく焼けた小麦の香り漂うアイランドキッチンに立つ私は、驚くほど落ち着いている。

「先生、この生地ちょっと発酵が甘いみたいで…」

「あっ、じゃあ僕が仕込んだあっちの生地で焼成しましょうか!」

ここのパン教室に通い始めて、3カ月余りが経った。 周りは10代もいれば50代の女性もいて、話のネタは決して尽きず、いつも楽しく通っている。

だけど、一番の理由は ≪ 先生 ≫ かもしれない。

「…三苫さん。帰り、ご一緒してもいいですか?」

周りのお嬢様ご婦人方の視線をかいくぐって私の隣にやってきた彼は、ここのパン教室で講師をしている。 私よりも2つ年下、物腰柔らかの爽やか系草食男子くん。

何故か懐かれてしまって、最近ではよくお誘いを受けるようになった。

「ん~、別にいいですけど…」

正直まんざらでもないんだけど、年下だしタイプとはちょっと違うしで、そっけない態度をとってしまう私がいる。

先生ってばなんだか小動物系で、格好いいよりなんだか可愛い。私の後ろをついて歩く感じ? だからこそ、結婚を前提に…のお付き合いというよりは、若い子の情
熱的な恋愛かな…と勝手に想像してみたり。

そんな先生からのアプローチはまるで高校生のようで、『あぁ、この人は本当に純粋で心の綺麗な人なんだろうな。』なんて思ってしまう。

一緒に帰りましょう、ランチに行きましょう、お買い物に行きましょう。

少しずつ少しずつ、本当に少しずつだけど確実に私との距離を縮めようと頑張る彼に、次第と惹かれていたのかもしれない。

0aa9e963d582b5940b764a37acc9f2be_s[1]

先生への気持ちに、自分でもなんとなく気付き始めていたそんなある日。

「三苫さん、今晩一緒に…ご飯、行きませんか?」

初めて先生から、ディナーのお誘いがあった。 食事に誘われたことはあったけど、いつもランチ。

決して夜に会いましょうなんて言われたことがなかったから正直驚いた。 …だけどそれと同じくらい、浮かれていたのも事実。

教室が終わり、急いで家に帰った。化粧と服と…いや、でも張り切っちゃってるなんて思われたら恥ずかしいし…

結局少しだけチークを足して口紅を引き直し、パンツは落ち着いたタイトスカートに、足元は5cmのヒールを選んで待ち合わせ場所に急いだ。

( 先生のこと馬鹿にしといて、初デートの中学生みたいだな、わたし )

待つこと10分。人込みをかき分けながら小走りで私の元にかけよってきた先生は、額の汗を拭いながら遅れたことをとにかく謝って、そんな姿にすら不覚にもときめいた。

ちょうど物差し一本分。並んで店を目指す私たちの距離は離れているが、お互い意識しあっていることは容易に見てとれた。

「えーっと、お酒飲むの初めてですね。なに飲まれますか?」

こじんまりとした、それでいてお洒落な佇まいの店の中、一番奥の個室に通された。

「わたし、とりあえずビールでいいかな。…先生お酒飲めるの?」

にやりと笑いながら煽るように先生を見上げると、頬を赤くしながら

「あんまり強くないんですが…、今日は飲んじゃいましょう!」

なんてはにかんだ笑顔で返されて、その想定以上の可愛さに思わず苦笑いを浮かべるほどだった。

729058f4b63ea5607670ee9a91ad729e_s[1]

お酒は進み、互いになんだかほろ酔い気分。 いい気持ちで店の外に出ると頬に触れる風が冷たくて、ほんの少しだけ私の酔いを醒ました。

( 告白とか、されるのかと思っちゃった。)

いい年してちょこっと期待なんかしちゃったよ、と反省しつつ彼の少し後ろを歩いていると 肩を上げた先生が真っ赤な顔をして勢いよく振り返った。

「け、…結婚、してください。」

視線は定まらず宙を泳ぎ、手はわなわなと居場所を探しながら、消え入りそうな声で先生は言った。

「…えっと、ちょっと待っ 「結婚してください!!!!」

私の静止を聞かず言い切った先生の目は、今度こそしっかりと私をとらえていて、その視線から逃げることができなかった。

「僕、女性の気持ちとか、正直わかりません。それでも、あなたを守りたいと思ってしまったんです。だめでしょうか。弱い僕では頼りないでしょうか。
…でも強くなります。あなたのそばにいられるなら!」

強く言い切った彼は、正気に戻ったのかただでさえ赤かった顔をもっと赤く染めて、すみませんと謝りながら顔を隠した。

( こんなにも純な恋愛、まだ私にもできるんだ )

私は彼の顔を覆う手をひとつ、またひとつとはなして、触れるだけのキスをした。

1504c0f2f2a0f7ffd1d916e85d668654_s[1]

その後、どちらからともなく一緒に住み始めた。 付き合ってくれとも好きだとも言われてないけど、たった一言「結婚してくれ」というプロポーズを貰った。

これから何年先になるかは分からないが、きっとこの人と生涯を共にできたら幸せなんだろうな、とは思う。

「 プロポーズから動き始めた恋 」

おかしいと笑われることもあるけど、私はいつもの彼を知っているからこそ、あの言葉の重みがわかる。

まだ頼りない彼だけど、一生懸命な純粋で可愛い人だから。

婚約者として彼の成長を見守るとしよう。

結婚カテゴリの最新記事